ポーカー関連の記事や動画で「ブロッカー」という単語を聞いたことがあるかもしれません。
これは、ポーカーを勉強していくうえで最も奥が深い要素の一つです。
ブロッカーを考慮することによって、直感に反するプレーが正解になることすらあり、面白いテーマです。
この記事では、ポーカーのブロッカーと、その逆のアンブロッカーについて解説していきます。
- ポーカーのブロッカーの意味
- ポーカーのアンブロッカーとは
- ブロッカーを考えるべき状況
是非最後まで読んでいただき、ブロッカーについて考えていただけたらと思います。
ポーカーのブロッカーとは?用語の意味を解説!
ポーカーのブロッカーとは、相手の特定のハンドを持つ可能性を減らせるカードのことです。
あなたが手に持っているカードを他の人が持っていることはあり得ません。
そのため、自分の持っているハンドによっては相手の持ちうる強い手の可能性を減らせることがあり、アクションを決断する決め手になり得ます。
ブロッカーの例
プリフロップの場面です。あなたはSBでA♥K♥を持っているとしましょう。
あなたは、HJのレイズに対し3ベットすると、HJに4ベットを返されました。
この時、相手のAAとKKの組み合わせを数えてみましょう。
AAは、A♥A♠、A♥A♣、A♥A♦、A♠A♣、A♠A♦、A♦A♣の全部で6通りです。
KKは、K♥K♠、K♥K♣、K♥K♦、K♠K♣、K♠K♦、K♦K♣の6通りですね。
つまり、KK+のハンドは全部で12通りあるわけです。
このうち、あなたがA♥K♥を持っていることから、ハートを含むAAとKKを相手は持ちえません。
よって、相手から出てくるKK+のハンドは、K♠K♣、K♠K♦、K♦K♣、A♠A♣、A♠A♦、A♦A♣の6つに限られます。
あなたのハンドによって、相手のKK+の可能性は半減しているのです!
よって、相対的に相手にTT~QQのようなハンドが増えるため、5ベットをすれば相手を降ろせる可能性が高いことが分かります。
ハンド数は「コンボ」で数える
ハンド数の組み合わせのことを、ポーカーでは「コンボ」で数えます。
例:AAは全部で6コンボだ。
コンボの数え方
特定の組み合わせのカードの枚数を掛け算すれば求めることができます。
例えば、KQのコンボ数を知りたい時、KとQはそれぞれ4枚ずつありますから、KQは全部で4×4=16コンボだと分かります。
もしKが1枚見えていた時はKの枚数を1枚差し引いて、3×4=12コンボだと計算することができます。
ただし、知りたいのがポケットペアの場合、n枚カードが残っていたとして、nC2で求めます。
例えば3枚のKが残っていたなら、3C2で3コンボのKKが残っています。
これはA♦A♥とA♥A♦のような並びだけ違うハンドを取り除くためです。
また次に紹介する、コンボ数を覚えておくといいでしょう。
- 特定のハンド:16コンボ(例:KQ)
- ポケットペア:6コンボ(例:KK)
- 特定のスーテッドハンド:4コンボ(例;AJs)
- 特定のオフスートハンド:12コンボ(例:AJo)
ブロッカーを持っているとどうなるの?
ブロッカーを持っていることによって、主に2つの効果が期待できます。
- ブラフキャッチが決まりやすい
- ブラフが成功しやすくなる
1つずつ見ていきましょう。
ブラフキャッチが決まりやすい
相手のバリューハンドをブロックしている時、あなたのブラフキャッチは決まりやすくなります。
典型的なものは、3枚♣が落ちているボードでA♣を持っている時などでしょうか。
この時、相手がAハイのフラッシュでバリューベットを打った可能性がなくなることから、相対的にバリューハンドのコンボが減少します。
そのため、ブラフキャッチが決まりやすいと言えます。
また、ブラフキャッチャーの強さによっては後述するブラフに変えてみるのも手です。
ブラフが成功しやすくなる
ブロッカーを持っていることで、ブラフが決まりやすくなる効果があります。
先ほどと同じで、3枚♣が落ちているボードでA♣を持っている時のことを考えてみてください。
この時、相手のフラッシュのコンボ数が減っているだけでなく、相手にAハイフラッシュという最強のフラッシュの可能性が無くなっています。
そのため、ブラフによる圧力が格段に掛けやすくなります。
ブロッカーの逆!?ポーカーのアンブロッカーについて解説!
ポーカーのアンブロッカーとは、相手の特定のハンドをブロックしないようなハンドのことです。
ブロッカーはナッツ級のハンドなど、相手に特定のハンドを持っていてほしくないときに考えるものです。
それに対し、相手に自分が勝てるような手を持っていてほしいとき、降ろせるような手を持っていてほしい時には、アンブロッカーを考えてみます。
アンブロッカーによって、これらのハンドを相手が持っている可能性が相対的に上昇するのです。
アンブロッカーの例
例えば、K♠2♠Q♦8♣7♥というリバーを考えたとしましょう。
この時、A♦J♦というハンドは、♠のミスフラッシュドローをアンブロックしています。
つまり、相手がフラッシュドローで滑っている可能性を相対的に大きくしていると言えます。
アンブロッカーを持っているとどうなるの?
アンブロッカーを持つことによって主に3つの効果が考えられます。
- 手の強さと期待値を逆転させることがある
- ブラフキャッチに生かせること
- ブラフハンドの選定に役立つこと
アンブロッカーはブロッカーの裏返しのような要素で、得られる効果もブロッカーに似ています。
順番に見ていきましょう。
手の強さと期待値が逆転することがある
実際の手の強さと、ハンドの期待値がアンブロッカーの影響によって逆転することがあります。
例えば、COがレイズしてBBがコールし、A♣K♦2♠というフロップが落ちた時、COの期待値を考えるとしましょう。
この時、KKのセットのほうがAAのセットより期待値が高くなります。
これは、BBの持つAのトップヒットをアンブロックしているからだと言えます。
実際、Aのトップヒットからなら、かなりバリューがとれそうですよね。
このように、バリューターゲットをアンロックしていることが、実際の手の強さ以上に期待値に反映されることがあるのです。
ブラフキャッチに生かすことができる
アンブロッカーを持っていることが、ブラフキャッチをするかどうか決断する要素になることがあります。
相手の打ちそうなブラフハンドを持っていないなら、相対的に相手のハンドレンジにブラフハンドが増えており、ブラフキャッチしやすくなります。
逆に、相手の強いハンドをアンブロックしてしまっているから、ブラフキャッチを諦めるなんてこともありえます。
ポラライズされたオーバーベットに直面したときは、ブロッカーだけではなく、アンブロッカーも考えるといいでしょう。
ブラフハンドの選定に役立つことがある
ブロッカーの時と同様、アンブロッカーによってブラフハンドを選ぶことがあります。
一般に、相手の降ろせそうなハンドレンジをアンブロックしているハンドがブラフハンドとしては優秀だと言えます。
典型的なものは、ドローミスのアンブロックです。
割と直感に反するようなブラフハンドが使われることもあり、研究のし甲斐がある部分です。
ポーカーのブロッカーのクイズに挑戦してみよう!
ここからは、ポーカーのブロッカーとアンブロッカーに関するクイズを3問出題します。
ブロッカーマスターを目指してクイズに挑戦してみてくださいね!
また、問題の最後には解説もしています。
問題①ブラフハンドの選定問題
COのあなたが2.5BBにレイズし、BBがコールしました。
フロップ:(Pot:5.5BB) K♣Q♣6♦
BBのチェックに対し、あなたはポットの75%のCBを打ち、BBはコールします。
ターン(Pot:13.75BB) 3♠
BBのチェックに対し、あなたはポットの130%のベットを選択し、BBがコールしました。
リバー(Pot:49.5BB) J♣
BBはチェックしてきました。あなたは再びポットの130%のベットをしようとしています。
この時、ブラフを継続しやすいハンドは次のうちどれでしょうか?
①9♦8♦ ②4♠4♥ ③A♣9♥
正解は③のA♣9♥です。
計算上、BBの相手に含まれるフラッシュのうち、1/4がAハイのフラッシュだということが分かります。
A♣は相手のフラッシュの可能性をかなり減らしてくれるため、相対的に相手を降ろしやすいです。
実際に、A9oやA8oでA♣を持っていた場合、ほぼすべての場合でブラフをしています。
問題②ハンドの期待値問題
COのあなたが2.5BBにレイズし、BBがコールしました。
フロップ(Pot:5.5BB) K♦9♠3♦
BBのチェックに対し、あなたは75%ポットのCBを打ち、BBはコールしました。
ターン(Pot:13.75BB) 2♥
この時、3つのハンドの中で期待値が最も大きいのはどれでしょうか?
①3♣3♥ ②9♦9♥ ③K♠K♥
正解は、②の9♦9♥です。
ソルバーによると、9♦9♥のEVが最も高く、28.02となっています。
ナッツである③のK♠K♥が21.61なのと比べるとかなり高くなっていることがわかります。
これは、99がバリューターゲットであるKヒットをアンブロックしているためだと考えられます。
あなたはすでに一度CBを打っていますから、Kヒットかフラドロ以外からコールを貰うのは難しそうです。
更に、K♠K♥はフラッシュドローをアンブロックしていることから、ドローに捲られる可能性があり、このことも期待値の低下に拍車をかけています。
ちなみに、①の3♣3♥のEVは25.57となっており、KKを上回っています。
いかに、バリューターゲットの存在が大切か分かりますね!
問題③ブラフキャッチ問題
COからの2.5BBレイズにBBのあなたはコールしました。
フロップ(Pot:5.5BB) A♠9♥6♠
あなたのチェックに対し、COはポットの33%のCBを打ち、あなたはこれにコールします。
ターン(Pot:9.13BB) T♦
あなたのチェックに対し、COはポットの130%のベットを打ち、あなたはこれにコールします。
リバー(Pot:32.87BB) 2♥
あなたのチェックに対し、COはポットの130%のベットを打ってきました。
この時、ブラフキャッチャーとして適切なハンドはどれでしょうか?
①A♥J♠ ②A♦4♦ ③A♥Q♣
正解は、②のA♦4♦です。
一見、一番弱そうに見えるのですが、驚くことにコールレンジを有するハンドは3つのうちこれだけです。
この問題は、ボードだけ見ていても答えにたどり着くことはできません。
理由を考察するには、相手のブラフレンジを考えてみる必要があります。
下のスクリーンショットの青い部分が、リバーでのCOのベットレンジを表しています。
これを見ると、相手のブラフレンジにQ8sやQ7s、QJなどのブラフレンジがあることが確認できます。
A♥J♠やA♥Q♣は、これらCOの主要なブラフレンジをブロックしており、相手のバリューハンドの可能性を高めてしまっています。
逆に、A♦4♦は相手のブラフレンジをほとんどアンブロックしていますから、手としては弱くてもブラフキャッチャーとしては優秀です。
ちなみに、AQの中でも、Q♠を持っている場合はブラフキャッチできることがあります。
これは、COがQ♠8♠やQ♠7♠ではブラフを打たないためであり、Q♠が相手のブラフレンジをブロックしてしまう可能性は低いといえます。
これはかなりの難問です。
理由まで含めて正解できたなら、かなりポーカー通といえるのではないでしょうか?
ポーカーのブロッカーのおさらいと注意点
この章では、ブロッカーの考えをおさらいすると共に、ブロッカーを考える際の注意点を紹介します。
ブロッカーを使いこなすためにも、是非確認してみてください。
ブロッカーとアンブロッカーのおさらい
ここで、ブロッカーとアンブロッカーを実戦でどのように考えればいいのか、状況別にまとめてみました。
順番に見ていきましょう。
バリューベットを打つ時
バリューベットを打つ時は、相手のレイズレンジをブロックし、相手のコールレンジをアンブロックしていると期待値が高くなりやすいです。
ブロックしたい相手のレイズレンジには、バリューはもちろん、ブラフレイズも含まれます。
ブラフレイズをブロックしていることにより、ベットフォールドを取るようなハンドのバリューベットが通りやすくなると言えます。
「バリューベットは打てるけど、レイズされると苦しい」ハンドはたくさんありますからね。
ブラフベットを打つ時
相手の強い手とブラフレイズレンジをブロックしているとブラフを打ちやすいです。
更に、リバーの場合はドローミスなど相手の弱い手をアンブロックしていると尚良しですね!
一般に、ドローミスでブラフを継続することが推奨されないのは、相手の弱い手をブロックしてしまい、相手を降ろせる可能性が下がってしまうからです。
ブラフキャッチするとき
ブラフキャッチをするときには、相手のバリューレンジをブロックし、相手のブラフレンジをアンブロックしているとブラフキャッチしやすいです。
これにより、相手がブラフをしている可能性が相対的に高くなり、ブラフキャッチが成功する可能性が高くなります。
ブロッカーを考える時の注意点
ここでは、ブロッカーを考える際の注意点を2つ紹介します。
- 相手をよく観察して使うこと
- ハンドレンジが狭まった状態で使うこと
下手にブロッカーを使おうとしても、空回りしてしまいがちです。使いどころをよく見極められるようにしましょう。
相手をよく観察して使おう
ポーカーの基本は、ブロッカーを考えるよりも、相手を観察し搾取することです。
ブロッカー戦術は、相手のハンドレンジに適切なバリューとブラフが混ぜられていることが前提の戦略です。
よって、相手がそのバランスを欠いている時には、ブロッカーに応じてプレーを変える必要はあまりありません。
「ブロッカーが優秀だから」という理由で無理なプレーをしてしまいう方が時々見受けられます。
しかし極端な話、ブラフを全く打たない相手に対してなら、いくら優秀なブロッカーを持つブラフキャッチャーでも降りたほうが明らかに得なのです。
逆に、相手がブラフを打ちすぎているなら、ブロッカーが悪くてもブラフキャッチするのが得になることもあります。
お互いのハンドレンジが狭まったときに使おう
ブロッカーの考え方は、お互いのハンドレンジが狭まったときに特に有効になります。
リバーの場面や、レイズ合戦になったときがこれにあたります。
ブロッカーで否定できるハンドは決して多くはありません。
よって、シングルレイズドポットのフロップなど、ハンドレンジが広い状態でブロッカーを考慮しても、大した効果は得られません。
100コンボのうち1コンボを否定できるのと、5コンボのうち1コンボが否定できるのでは、重みが全く違うことを覚えておきましょう。
ブロッカーを使いこなして戦術に役立てよう!
ブロッカーはとても奥が深い要素で、研究しがいのあるテーマです。
もしあなたが難しい状況に陥った時、ブロッカーはその助けになってくれるかもしれませんね。
参考文献など
What is Unblocking in Poker & Why Does it Matter?
What is Unblocking in Poker & Why Does it Matter?
アンブロッカーを紹介している英文の記事です。アンブロッカーという名称は、この記事に準拠しました。
Upswing Pokerの記事は、英語も比較的易しくて読みやすいので、ポーカーと英語の勉強には最適です。
【本当は教えたくない】世界プロのハイレベル過ぎる「ブロッカー」について解説します。
大人気Youtuberで、ポーカープロの世界のヨコサワが説明するブロッカー戦術です。
彼の言う「リバースブロッカー」がこの記事で言うアンブロッカーと同じ意味だと思って大丈夫です。