最近、ポーカーでポラライズという単語をよく聞くようになりました。
中村多聞プロが、動画内でポラライズを多用してイジられていますよね!
実はポラライズはポーカーで有利に戦うための武器のひとつなのです。
この記事ではポーカーのポラライズについて解説していきます。
- ポーカーのポラライズ
- ハンドレンジが置かれている状態がわかる
- GTOの基礎
是非最後まで読んでいただき、ポラライズについて知っていただけたらと思います。
ポーカーのポラライズとは?用語の意味を解説!
ポーカーのポラライズ(Polarize)とは、すごく強いか、すごく弱い手に二極化されたハンドレンジを持っている状態のことを言います。
Polarizeは動詞なので、「二極化された状態にする」「二極化された状態を作り出す」と表現したほうが正しいかもしれません。
ポラライズされたハンドレンジを持っていると、あなたはブラフハンドとバリューハンドと上手く混ぜたベッティング戦略を取ることができ、利益的にプレーしやすくなります。
ハンドレンジの状態は3つに分類される
ポーカーにおけるハンドレンジは大きく分けて3つに分類されます。
- ポラライズドレンジ
- コンデンスドレンジ
- リニアレンジ
ひとつずつ見ていきましょう。
ポラライズドレンジ(両極化レンジ)
両極化レンジ(Polarized Range)は先述したように、強い手と弱い手を両方持っているレンジです。
図は、ポラライズドレンジを持つプレイヤーのエクイティ分布です。
ポラライズドレンジを持っている時、あなたはアグレッシブにプレーしやすくなります。
バリューもブラフも含まれたバランスのいいベットを行うことができるため、ベットに直面した相手をとても苦しい状況に追い込むことができます。
コンデンスドレンジ(凝縮レンジ)
凝縮レンジ(Condensed Range)は中程度の手で構成されたハンドレンジです。
マージナルな手で構成されていることから、ブラフであれ、バリューであれ、ベットを打つことはあまり利益的になりません。
コンデンスドレンジを持っているなら、ベットやレイズを行うことは避けて、ブラフキャッチに専念するべきです。
リニアレンジ(線形レンジ)
線形レンジ(Linear Range)とは、強い手ばかりを含んだハンドレンジのことです。
ポラライズドレンジからブラフハンドを取り払ったハンドレンジと捉えてもいいかもしれません。
バリュー過多なベットやレイズを行うと、ハンドレンジは線形化します。
リニアレンジは、ブラフレンジを含まないことから、相手に悟られるとオーバーフォールドされてしまい、バリューが取りにくくなってしまいます。
一方で、リニアレンジを形成するべき局面もあります。それは、SPRが低いときです。
SPRが低い時、ハンドレンジを線形化させることが正当化されます。ショートスタックだったり、プリフロップで4betや5betが入ったりした時がこれに該当します。
SPRが低いと、早い段階でコミットすることになります。レンジを両極化させる前にコミットするので、ブラフを打ったとしても、相手はフォールドしにくくなります。
逆に言えば、相手にオッズコールさせやすい状況であると言えます。
つまり、SPRが低いなら、強い手でオールインと言っておくだけでも十分バリューベットが成立するのです。
ハンドレンジの状態を見極めよう!
自分が今、ポラライズドレンジを持っているのか、コンデンスドレンジを持っているのか見極めてプレーすることが肝要です。
その見極めが甘いと、頓珍漢なプレーをしてしまいかねません。
ポラライズドレンジを持っている時にパッシブにプレーしても、利益を取り逃してしまいます。
逆に、コンデンスドレンジを持っている時にアグレッシブになっても、強い手にコールされ、弱い手にフォールドされてしまうだけです。
自分が今どのようなハンドレンジを持っているかを考えたうえで、それに沿った戦略を取ることが求められるのです。
ハンドレンジの状態はアクションによって変化する
理論上、ベットやレイズをすると、ポラライズドレンジに近づき、コールをするとコンデンスドレンジに近づいていきます。
アグレッサー側はベットやレイズにブラフを混ぜることができますが、コーラーはブラフでコールすることは基本的にないからです。
「コールした後はチェックしなさい」という定石は、「コンデンスドレンジを持っているからチェックしなさい」と言い換えることができるのです。
手をベットによって両極化させたい場合、バリューハンドと、ブラフハンドをベットして、残りの手をチェックすることで、ポラライズドレンジを形成できます。
ボードによってハンドレンジの状態が変化するパターン
落ちるボードによっても、ハンドレンジの状態が変化することがあります。
コーラーに都合のいいカードは存在しますし、コーラーもドローでコールすることはありますよね。
例を挙げてみましょう。
COの2.5BBのレイズにBBがコールしました。
フロップ(Pot:5.5BB)
A♠8♣7♠
この時のBBのエクイティ分布は次のようになります。
強い手もありますが、ほとんどが弱~中程度の手です。
BBのチェックに対し、COはポットの33%のベットを打ちます。これに対し、BBがコールします。
ターン(Pot:9.8BB)
6♦
BB目線ではドンクベットも考えられる都合のいいカードです。
この時、BBはとても強い手と、とても弱い手両方を含んでいることが予想できます。
BBにはマージナルな手ももちろん含まれますが、2ペアやストレートなど、非常に強くなった手がいくつも考えられるからです。
ここで、2ペア、ストレートと、ドローなどを合わせてドンクベットすることで、手の強さを二極化させることができます。
BBがポットの33%のドンクベットを打った時、このようなエクイティ分布を持ちます。
先ほどと比べて、分布がかなり両極化されていることがわかります。
とはいえ、ベットをすることなしにハンドレンジが二極化されることはありません。
チェックするとマージナルな手がハンドレンジに残るからです。
ポラライズドレンジを生かした最適なベット戦略について解説!
あなたのハンドレンジに両極化された部分が含まれており、ベットすることでポラライズドレンジを形成できそうであるとしましょう。
この時の最適なベット戦略を考えてみましょう。
この章は所謂GTO(Game Theory Optimal)の基礎の基礎にあたる部分です。
少しだけ数学的な話もしますが、ここを理解できれば、GTOへの理解も深まるでしょう。
ポーカーでゲーム理論を用いる際の意思決定の基本
ゲーム理論における最適の選択とは、最も期待値の高い戦略です。
よって、ほかのアクションに比べて、期待値が優位に高いアクションがあるなら、その戦略だけを取ります。
一方、戦略間で期待値が変わらないこともあります。じゃんけんが典型的な例です。
これらを「無差別な戦略」と呼びましょう。
無差別な場合の最適戦略は、相手が戦略を変えることによって、期待値を上昇させることのできないような戦略です。
具体的には、期待値の変わらない複数のアクションを混ぜた混合戦略になります。
このように、お互いの戦略の変化によって期待値が上昇しない状態をナッシュ均衡と呼びます。
じゃんけんなら、グー、チョキ、パーを偏りなく出すことでナッシュ均衡になります。
ポーカーで混合戦略が出てくるのは、アクションが無差別なシチュエーションだと覚えておいてください。
最適なベットとは、相手のアクションを無差別化できるベット!
あなたがポラライズドレンジを形成できる時の最適なベットとは、相手のアクションを無差別化できるベットです。
具体的には、相手がブラフキャッチしたときの期待値を0にするようなベットです。
これにより相手はフォールドとコールの戦略を無差別化されてしまいます。
こうなると、相手はどの戦略を取っても損にも得にもならないうえ、均衡戦略を取れないと相手に搾取されるという難しい状況に立たされます。
ちなみに、あなたのベットが厳密にポラライズされ、かつ相手がコンデンスドレンジを持つ時、相手はレイズすることが損になってしまいます。
強い手はレイズやコールをすればいいですし、弱い手は降りてしまえばいいだけですからね。
GTOの基礎が詰まったAKQゲームで考えてみよう
ここでは、GTOの概念を学習するために用いられるAKQゲームを紹介します。
バリエーションがいくつかありますが、最も簡単なタイプを見ることにします。
AKQゲームを用いて、無差別化するようなベットとはどのようなものか考えてみましょう。
【ルール】
AとKとQの3枚のカードを用いて行うゲームです。
カードの強さはA>K>Qの順番です。
あなたはAまたはQを持ち、相手はKを持ってプレーするとします。
まずはお互いにアンティ$1を支払います。
あなたは必ずOOPで、$1のベットまたはチェックをすることができます。
あなたのアクションの後、Kを持った相手のアクションとなります。
ベットされたK側が取れるのはコールかフォールドのみで、レイズは出来ません。
チェックされたK側はチェックか$1のベットを選択できます。
フォールドが入らなかった場合、ショウダウンして強いハンドを持っているほうがポットを獲得します。
あなたがAを持っている場合、100%の割合でベットすることになります。
スロープレーしたとしても、相手のKにはベットするインセンティブは全くないからです。
Aは絶対に降ろせませんし、Qからコールを貰えることはあり得ませんからね。
問題は、Qを持っている時のブラフ頻度です。あなたはどのような頻度でQをブラフするべきでしょうか?
あなたがベットレンジにx(0≦x≦1)の割合でQを含めた時、相手がコールしたときの期待値EVKは、xの確率で$3を得て、(1-x)の確率で$1失うので
EVK=3x-(1-x)=4x-1
相手のコールが無差別なアクションになるとき、EVK=0であるから
4x-1=0
x=1/4
よって、4回に1回の割合でブラフを打つことが最適なアクションだと言えます。100%の割合でAをベットする時、Qを3回に1回ブラフすればいい計算です。
ちなみにKのブラフキャッチ頻度を求めてみたい場合は、Kのブラフキャッチ頻度を変数において、あなたがQをベットしたときの期待値EVQが0になるように方程式を立てればOKです。
すると、Kは3回に2回ブラフキャッチすることで相手のQのベットを無差別化できることが分かります。
AKQゲームで適切なブラフ頻度がわかる
AKQゲームから、あなたがポラライズドレンジを持っている時の適切なブラフ頻度を知ることができます。
先ほどのAKQゲームをもう少し一般化してみましょう。
ポットが1だとして、nのベットを打つとします。ポットのn倍のベットをしたとも言えますね!
すると、EVK=0の時
(n+1)x-n(1-x)=0
これをxについて解くと、
x(n)=n/(2n+1)
これが、ポットのn倍をベットしたときの適切なブラフ頻度になります。
ポットベットならブラフ頻度は3回に1回、ダブルポットなら、40%の割合でブラフすることが最適戦略になることが分かります。
つまり、ポットを大きくすればするほど、多くのブラフを含めることが正当化されるのです。
更に、nの極限を取ってみましょう。nを無限大にしたとき、xは
lim[n→∞]x(n)=1/2
となります。ここからわかるのは、どれだけベットを大きくしようとも、50%以上の頻度でブラフすることは利益的ではないということです。
半分以上ブラフしてしまったら、相手は100%の頻度でコールすることで、あなたを搾取することができますからね。
理論を実践に生かす!ポラライズされたベット戦略を解説!
ここからは、実践編です。
ポラライズドレンジを実戦で生かすためのベット戦略を考えていきます。
ベットを大きくするとどうなるの?
ポラライズされたベットには、よくポットオーバーベットが用いられます。
オーバーベットを用いることで、3つのメリットを得ることができるからです。
- ブラフ頻度を増やすことができる
- ブラフが通りやすい
- バリューハンドでポットを焚きやすい
ポットを大きくすることでブラフ頻度を増やせることは、今まで見てきたとおりです。
また、ポットが大きくなることで、相手はより多くのハンドをフォールドせざるを得なくなり、ブラフが通りやすいです。
それだけではなく、もちろんバリューベットが成功すればそれだけ多くのチップを得ることが可能になるのです。
ただし、分散はとても大きくなるので、オーバーベットを使う際は、バンクロールやプレースタイルと要相談です。
例題
COの3BBのレイズにBBだけがコールします。
フロップ(Pot:6.5BB)
A♠8♣7♠
BBのチェックに対して、COがポットの66%のCBを打ち、BBがコールします。
ターン(Pot:15.08BB)
2♥
BBのチェックに対し、COが150%のオーバーベットを打つとき、どのような手でベットしますか?
COのエクイティ分布を見てみると、いい感じに両極化された部分が存在します。
こんな時、ポラライズされたオーバーベットの使いどころです。
実際にはこのようなレンジでオーバーベットを打ちます。(青い部分)
Qキッカー以上のAのペアや、2ペア、セットなどをバリューのオーバーベットに回しています。
AJは頻度戦略を取ります。チェックすることのほうが多いです。
ブラフとして、フラッシュドローや、ショウダウンバリューの全くないゴミハンドを採用しています。
K3sやJTs、スモールペアやQ5sなど、エアーともいえるブラフもしており、ブラフ頻度がかなり高いことが伺えます。
ポラライズドレンジを持っているなら稼ぐチャンス!
もしも、ポラライズドレンジを形成できたのなら、稼ぐチャンスです。
また、アグレッサーになったとき、ポラライズドレンジを作れるようにベットしていけば利益的にプレーできるようになるでしょう。
一方で、オーバーベットは使い方を誤ると痛い目を見かねない危ないプレーでもあります。
ポラライズを生かしたいのなら、ボードや自分のハンドレンジのバランスをよく考え、タイミングを見極める必要があるでしょう。
参考にした書籍など
アンドリュー・ブロコス ポーカーとゲーム理論 ―最適化戦略構築からエクスプロイト戦略への応用まで
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