この記事では、ポーカーの戦略について考察していきます。
ポーカーは、投げやりな言い方をすれば、状況次第なゲームです。
ですから、「稼げるような戦略を紹介する」というのは難しいかもしれません。
ここでは、「相手や状況にどのように対応していくか」ということに焦点を当てていきます。
- ポーカーで変えられる戦略
- SSSやMSSについて
- 相手や状況に対応する方法
ぜひ最後まで読んでいただき、ポーカーの戦略について考えていただけたらと思います。
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ポーカーにおける「戦略」を定義しよう
ゲーム理論でいう戦略とは、プレイヤーが選ぶ行動のことを言います。
取った行動によって、得になるのか損になるのかを考えるわけです。
この記事では戦略を「プレイヤーが選択する1つ以上の意思決定の組み合わせ」であると定義します。
行動1つを戦略とするだけではなく、行動の集合体を戦略として解釈してください。
例えば、プリフロップの戦略を考えたいとしましょう。
この時、特定のハンドレンジに従いレイズ、コール、フォールドすることを1つの戦略だと見做します。
ポーカーで取るべき戦略とは?
ポーカーで取るべき戦略は、利益を最大化し、損失を最小化できる戦略であるとします。
ゲーム理論や(古典的な)経済学の世界でも同じような仮定が取られます。
つまり、勝つことを主体に置く合理的なプレイヤーを仮定するわけです。
実際は、人間の意思決定は非合理的なものも多いのですが。
ポーカーではどのように戦略を変えられるのか
ここでは、ポーカーでどの部分を戦略によって変えられるのか見ていきましょう。
プレイヤーが変えられる戦略は主に3つになると思われます。
- テーブルに持ち込むチップの量
- プリフロップの戦略
- ポストフロップの戦略
順番に見ていきましょう。
テーブルに持ち込むチップの量
テーブルに持ち込むチップの量を変えることが戦略となり得ます。
なぜならプレーする際のSPRが変化するからです。
SPRとは、Stack to Pot Ratioの略で、有効スタック(そのハンドで勝ち負けしうる最大のスタック)とポットの比率のことです。
この値が小さくなると、ポットコミットを起こしやすくなります。
そのため、プレーするハンドやポストフロップの戦略がスタックによって変化することになります。
さらに言えば、あなたはテーブルに置いた以上のチップを一度に失うことはありません。
トーナメントではそうはいきませんが、キャッシュゲームではバイインの額をある程度自分で決められることがほとんど。
自分がテーブルで取りたい立ち回りによって、バイイン額を戦略的に変えることが可能です。
プリフロップの戦略
プリフロップで変化させることのできる戦略として、スターティングレンジとオープンサイズが挙げられます。
スターティングレンジと一口に言っても、考えることはいくつかあります。
どれくらいのレンジで参加するのか、リンプレンジを作るのか、リレイズのレンジはどうするのか等々。
また、オープンサイズもプレイヤーが任意に選べる要素ですよね!
大きくすることでポットを大きくしやすくなり、スチールの可能性を高める一方、コールされたときの相手のレンジは強くなり、リスクが大きくなります。
そのバランスを取る方法を後の章で解説していきます。
ポストフロップの戦略
ポストフロップでは、主に自分のアグレッションとコールの頻度を変えることができます。
自分からベットやレイズを仕掛けてチップを奪ったり、相手を降ろしたりするのか、スロープレーして相手に打たせるのかもポーカーの駆け引きです。
また、ブラフキャッチャーをコールできる頻度も相手のブラフ頻度に依存すると言え、戦略を変えていく必要性があると言えます。
戦略によって変化しない要素もある
あなたの戦略の変化によって、変化しない要素もたくさんあります。
まずは相手の戦略です。
相手も独立した意思を持った人間ですから、あなたがどんな戦略を取ろうと思い通りにはできません。
それから、レーキやテーブルのステークスなども変化しません。
特にレーキはプレイヤ―の意思決定に関係してくる重要な部分であると言えます。
ポーカーでは、自分では変えられない部分に対してしっかり対応していくこと(アジャストすること)が勝利へのカギになります。
ポーカーのGTO戦略とエクスプロイト戦略
ここで、GTO戦略とエクスプロイト戦略について触れておきます。
最新にして王道のGTO戦略
GTOはGame Theory Optimalの略で、理論上相手に搾取されない戦略です。
理論上搾取されない戦略であることから、GTO戦略を取っていれば理論上相手に負けることはありません。
更に、GTOから乖離したプレイヤーから利益を出すことが可能です。
現代においてはGTOはセオリーと同義であり、GTOを知っておくことで理論解から乖離したプレイヤーに気付くこともできるでしょう。
そんなGTOにも欠点があります。まず、解析できるのがヘッズアップに限られるということです。
マルチウェイになった場合、GTOで解析することは現状不可能です。
AIによる強化学習や簡易モデルでの研究も行われてはいますが、現状はセオリーに則って感覚でプレーしなくてはなりません。
また、GTOの解はレーキやお互いのハンドレンジ、有効スタックなどの影響を大きく受けます。
これらの値が変わると解が大きく変わってしまうことも少なくありません。
例えばハンドレンジ。トレーディングカードゲームで対戦することを想像してみてください。
もし相手(と自分)のデッキが分かっているなら、取るべき戦略は想像がつくかもしれません。
でも、デッキが変わってしまったらどうでしょう。同じ戦略を取ることが最適だと言えるでしょうか?
このように、GTOには様々な要素で最適解が変化してしまうという欠点もあります。
実際の解析では、有効スタックとハンドレンジ、レーキ、ベッティングサイズなどを仮定して解析します。
高額なツールを用いればプリフロップの解析も出来なくはないですが、ポストフロップに比べて要素数が急増するため、かなりハードルが高いです。
エクスプロイト戦略
エクスプロイト戦略とは、相手の隙に付け込むための戦略です。
もし相手のプレーに何らかの穴があるなら、それに付けこむことが最も利益的な戦略です。
一方で、エクスプロイト戦略は諸刃の剣。常に自分が付けこまれる可能性にさらされることになります。
相手の裏をかいて、その裏の裏をかく……という形でメタゲームが進んでいくことがエクスプロイト戦略の特徴です。
相手との駆け引きという点では、ポーカーの醍醐味ともいえます。
ポーカーで持ち込むチップの戦略を解説!あなたに合った戦略を見つけよう
ここでは、3つのスタックサイズに関する戦略を紹介します。
持ち込むチップを変えることで、戦略性や取るべきリスクが変わってきます。
一般的に、スタックが大きくなるほど、ハイリスクハイリターンで、ポストフロップのプレーは難しくなります。
テーブルの状況に応じて使い分けていきましょう。
ショートスタック・ストラテジー(SSS)
ショートスタック・ストラテジーとは、20BB程度のスタックで行われる戦略です。
20BBとなるともはや、リバーまで行くことなしにオールインになってしまうようなスタックサイズです。
3BBオープンしてBBにコールされただけでもSPRは3を切ってしまいますからね。
こうなれば、トップペアを持っているだけでオールインできてしまいますし、難しいターンやリバーもプレーせずに済むことが多いです。
もっと簡単なのは、オールインかフォールドでプリフロップをプレーすることでしょう。
これなら初心者でも、搾取される可能性が少なくなり、うまいプレイヤーに対して比較的有利な運ゲーを仕掛けることができます。
またSSSを用いるなら、ハンドレンジは固めにするのがオススメです。
なぜなら、投機的なハンドが強くなる前にオールインになってしまうことが多く、引いた時のリターンも小さいからです。
よって、スーテッドコネクターやスモールペアを「引けば強くなるから」という理由で参加することはオススメできません。
とはいえ、実際のカジノでは20BBバイインは認められないことが多いです。
そのため、SSSはトーナメントの中盤やキャッシュゲームで手持ちが少なくなってしまったときに取り入れる戦略だと言えます。
ミドルスタック・ストラテジー(MSS)
ミドルスタック・ストラテジーとは、40BB~50BBくらいで行われる戦略です。
SSSと違い、MSSを使うような状況は自分で作れることが多く実用的です。
MSSの戦略の魅力は、やはりSSS同様に戦略を単純化できること。
ターンやリバーでコミットする可能性があることから、コミットプランを立てやすく、難しい意思決定を減らすことが可能です。
また、負けた時の損失を抑えられることから、後述するBSSに比べリスクを最小限にとどめることができます。
そのため、少ないバンクロールでポーカーを打つことが可能です。
MSSでプレーするときも、投機的なハンドのプレーは控えて強い手で参加するべきです。
インプライドオッズが低下しており、引いた時のリターンが出費に見合わないことが多いからです。
いつものレートより高いレートに座ってみたいなら、バイインを少なめにして様子を見ることも有力な選択肢です。
ビッグスタック・ストラテジー(BSS)
ビッグスタック・ストラテジーとは、100BB程度で行われる一般的な戦略です。
SPRが大きくなり、投機的なハンドの価値が上がるほか、強い手でたくさんのチップを奪える可能性があるのがメリットです。
ポーカーで取れるチップは自分のスタックと同じだけですからね。
一方で、テーブルに置いたチップは一度の勝負ですべてなくなる可能性があります。
リスクが大きいだけに、難しい判断を迫られることも増えるでしょう。
もしポーカーの腕に自信があって、十分なバンクロールで打てるとするならば、BSSをプレーするのが最も効率的です。
ポーカーのプリフロップ戦略一覧!プリフロップの戦略を考えてみよう
ここでは、プリフロップにおいて、どのように相手にアジャストできるのかを考えてみます。
戦略のすべてを表すことはできませんが、状況に応じてどのように戦略を変えるのかが何となくわかるようになっています。
プリフロップの参加方法
プリフロップでゲームに参加する場合、3つの手段が考えられます。
- レイズをする
- リンプインする
- 相手のレイズにコールする
この節では、相手にアジャストすることにフォーカスします。
後の節でレーキやオープンサイズの話をすることにしましょう。
レイズをして参加する場合
レイズするレンジを調整する場合、相手のコール頻度やリレイズ頻度に注目すると適切な戦略を選択しやすくなります。
相手のコールするレンジが広いならば、投機的なハンドでレイズする頻度を少なくします。
具体的には、AXoやAXsの下限を少し広くして、KXsや75sのようなハンドを削っていけばいいと思われます。
広くコールする相手ならば、AXoのようなランダムハンドに対するエクイティが高いハンドが有利です。
もし、相手に3betが多いならば、4betレンジを見直してみましょう。ブラフレンジを用意できると最高ですね。
また、ポジションがありヘッズアップが確定するなら、投機的なハンドをかなりタフにコールする必要が出てきます。
逆に、相手のコールするレンジが狭く、リレイズを返してこないなら、投機的なハンドで積極的にレイズをしてスチールを狙うことが可能になります。
このように、普段のハンドレンジを相手や状況に応じてアレンジしていくことで、より利益を出せるようになります。
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リンプして参加する場合
基本的に、リンプインをすることは利益的ではなく、合理的な戦略として選択する余地はほとんどありませんが、一応使いどころがあります。
それは「疑似ポジション」としての使い方です。
疑似ポジションはリンプすることで、誰かがレイズすることを期待して、アクションを先送りしようという戦略です。
ハンドの参加率も3bet率も極端に高いプレイヤーがあなたの左隣にいるとしましょう。(以後マニアックと呼びます)
あなたはLJでAToや66のような参加できるギリギリのハンドを持っているとします。
参加したい手ですが、マニアックの3betにはとても耐えられるハンドではありません。
このようなシチュエーションで、HJがレイズしてくれることを期待してリンプインをしてみるとどうでしょうか?
狙い通りにHJのマニアックがレイズを返してきたとすると、あなたの次のアクションはプリフロップの最後に回ってくるはずです。
こうすることで、参加できるギリギリのハンドでポットをコントロールでき、周囲の様子見ができるわけです。
マニアックのレイズに3betを返すプレイヤーがいれば降りればいいですし、マニアック相手なら余裕でコールできるはずです。
このように、マニアックにポジションを取られ、執拗に絡まれる場合にはリンプが刺さることがあります。
また、疑似ポジションを使うなら、リンプレイズするレンジも作っておくと、よりいやらしく立ち回れますよ!
相手のレイズにコールする場合
相手のレイズするレンジが広いとき、いつもより広くコールすることが正当化されます。
相手のレイズレンジが広いのならば、相手のハンドレンジには弱い手が多く含まれているはずだからです。
ルースなプレイヤーに対してならば、弱いAXoやKXoでもエクイティで勝っていることも増えるでしょう。
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オープンサイズとハンドレンジ
ここで、オープンサイズとハンドレンジの関係について触れておきます。
一般的に、採用するオープンサイズが大きくなればなるほどハンドレンジを絞ることになります。
これは、オープンサイズが大きくなることで、相手のコールレンジが強くなり、コールされた際のリスクが大きくなるからです。
逆に相手のオープンサイズが大きいなら、あなたがコールできるハンドレンジも狭まります。
レーキの高いテーブルではハンドレンジを絞って、オープンサイズを大きくすることで対応するのが一般的です。
ポーカーのハンドレンジについて
ポーカーのポストフロップ戦略!相手をどう搾取できるかを解説!
ここからはポストフロップ編です。
戦略はさらに複雑になりますが、戦略を決定するうえで役立つ要素を2つ紹介します。
相手のアグレッションに注目しよう
ポストフロップを考えるうえで、相手のアグレッションに注目するのはとても重要なことです。
ここでは、(過度に)パッシブな相手とアグレッシブな相手に対して、どのような戦略で対応できるのかを考えていきます。
相手がパッシブな場合
相手がパッシブでほとんどベットやレイズをしてこない場合、ベットを増やしてアグレッシブにプレーすることで相手に付けこむことができます。
降りすぎる相手に対してはブラフを多めに織り交ぜながらガンガン攻めていくのが吉。
相手のエクイティを奪うことで、ブラフでの利益を最大化できることでしょう。
逆に、パッシブな相手がコールやレイズに踏み切った場合、相手の手は相当強いと予想できます。
無理なブラフは避けて、特に慎重にプレーするべきです。
相手がアグレッシブな場合
アグレッシブな相手と戦う場合、相手のベットに対していつもより広くコールやレイズをする必要が出てきます。
相手が高い頻度でベットしてくるのならば、相手のハンドレンジにはブラフが多く含まれていると考えられるからです。
フロップの段階でペアやドローがあるなら十分にコールすることが出来るでしょう。
また、チェックレイズを増やすのもオススメです。
チェックレイズにうまく対応できるプレイヤーはそこまで多くなく、利益を出しやすいと言えます。
もしも、相手によくチェックレイズを返されるのであれば、ブラフベットを減らし、コールを増やすほか3betを返すことも考えてみましょう。
また、あなたがコーラーならスロープレーしてみて相手に打たせるようなプレーも刺さりやすいです。
自分のポジションに注目しよう
相手と戦ううえで、自分のポジションの有無を考慮することは欠かせません。
ポーカーではポジションはとても重要な要素で、当然ポジションがあったほうがプレーはやりやすいと言えます。
例を出しましょう。プリフロップでBTNがレイズ、BBのあなたは8♦8♠でコールしました。
フロップ:7♠K♦6♥
BTNのCBにあなたはコールしました。
ターン:4♥
あなたにだいぶ都合が良さそうなカードが落ちました。ドンクベットを打ってもよさそうです。
しかし、ドンクベットを打たれたからと言って、相手のKヒットのレンジが消えるわけではありません。
では、あなたがコーラーのIPで同じ8♦8♠を持っていたらどうでしょうか?
相手がダブルバレルを打つのか確認してから、立ち回りを決めることが出来ます。
ダブルバレルを打つようなら降りてもいいですし、相手がチェックしたのなら、この手をブラフに変えてプレーする余地が生まれるでしょう。
このように、ポジションの有無で動きやすさが変わるのです。
ポーカーのポジションについて
ポーカーが上手い人は状況に応じて戦略を変えられる人!
この記事では、ポーカーの戦略というテーマでお話してきました。
具体的な戦術は一朝一夕では身に付きませんが、自分に何ができて何ができないのかを知っておくのは大切です。
相手をよく観察して、対応するプレーに挑戦してみましょう。