ポーカーのオッズとアウツは、勝つために必要になる理論のうち最も基本的なもののひとつです。
ポーカーは短期的に見れば運に大きく左右されるゲームです。しかし、長期的に見て利益的な決断を下し続けることで、勝ち越すことが可能です。
オッズとアウツの考え方は、自分のプレーが利益的かどうかを数学的に見積もる武器のひとつなのです。
この記事では、ポーカーのオッズとアウツについて例題を交えながら解説していきます。
- ポーカーのオッズとアウツ
- ポーカーの勝率の計算方法
- オッズをポーカープレーに生かす方法
是非最後まで読んで、あなたのポーカープレーに生かしていただけたらと思います。
この記事ではたくさんのポーカー用語を使っています。わからない場合は下記の記事を参照してみてください。
ポーカーのオッズとは?用語の意味を解説!
ポーカーのオッズとは、賭けるチップと勝った時に得られるチップの比のことを言います。
- オッズ(倍) = ポットの総額 ÷ 投資金額
例:あなたは対戦相手から$50のベットを受けました。ポットには$100入っています。オッズはいくらになるでしょうか?ただし、勝負はヘッズアップだったとします。
このベットにコールするのに$50かかり、あなたがコールするとポットは$200になります。
ポット÷投資額 = 200÷50 = 4
となり、オッズは4倍となります。
ちなみに欧米では、投資額 : 現在のポットという表記をするのが一般的です。
現在のポットとは、ポット + 相手のベットの合計ですので、先ほどの例で言うとオッズは1:3となります。海外の記事を参考にしたい方は覚えておきましょう。
この記事では、今後〇倍というオッズの表し方をしていきます。
今までに投じたチップのことは考えない
オッズを計算する際は、現在の状況のことだけを考えます。
オッズ理論を初めて聞いた方は、今までに投じたチップを投資額に計上しなくていいのか疑問に思うかもしれません。
結論から言うと、オッズ理論では今までの投資額のことは考えません。ポーカーではポットに入れたお金は使ってしまったものだと考えます。
ポットに入れてしまった時点でそれはもうあなたのお金ではないのです。
ポーカーのオッズがわかると必要な勝率がわかる
ポーカーのオッズを知ることができれば、コールが利益的になるために満たすべき勝率を知ることができます。
利益的となるために必要な勝率を満たすことを「オッズに合う」と言います。
- 1÷オッズ
- %で表したければ100をかける
数学的に言うなら、オッズの逆数が必要勝率です。
(導出)
x (0≦x≦1)を勝率、yをオッズ、zを投資額(yとzはともに正の数)としたとき、
x(yz-z) - z(1-x)
のように期待値を表せます。噛み砕いて言うと、xの確率で(yz-z)の利益が出て、そうでないとき、zを失うという意味です。この値が0以上の時、利益的であると言えるので
x(yz-z) - z(1-x) ≧ 0
となるxを求めていきます。zを消去してxについて解くと
x ≧ 1/y
となり、オッズが合う勝率xの条件が求まります。
先ほど出てきた例で考えてみましょう。$50の投資で$200を得る時、オッズは4倍でした。このとき、オッズが合うようなコールをするには1/4つまり、25%以上の勝率が必要であることがわかります。
必要勝率早見表
とはいえ、ポーカーをプレーしている最中にこのような計算をするのは難しい!という方が多いでしょう。
ですので、よくあるベットサイズに応じた必要勝率をまとめてみました。
ベットサイズ | オッズ | 必要勝率 |
ポットの33% | 5.03倍 | 19.9% |
ポットの50% | 4倍 | 25% |
ポットの75% | 3.3倍 | 30% |
ポットの100% | 3倍 | 33% |
勝率を知るのに欠かせない!ポーカーのアウツとは?
アウツとは逆転に必要なカードのことです。
これまではオッズから必要な勝率を見積もる方法を見てきました。しかし、現在の勝率が分からなければ意味がありません。
ここからは、逆転できるカードの枚数から現在の勝率を見積もる方法を紹介します。
アウツの数え方
逆転できそうなカードの枚数を数えるだけです!
ここで重要なのは「逆転できそうな」というところです。
例題
あなたはBBでCOのレイズに9♥8♥でコールしました。
フロップ: A♥T♥2♠
あなたはチェックし、COは小さなCB(コンティニュエーション・ベット)を打ってきました。
相手のバリューハンドにはセットや2ペアはもちろん、AヒットやTヒット、JJ~KKなどが含まれており、9や8をヒットさせたとしても勝てそうにありません。
この時、あなたのアウツは何枚でしょうか?
あなたがターンで逆転するには、フラッシュが必要そうです。つまり、アウツは♥のカード全てです。残りの♥のカードは
2♥3♥4♥5♥6♥7♥J♥Q♥K♥
の9枚であることがわかります。ただし、相手がセットを持っていると見積もったとき、2♥はアウツになりません。なぜなら、相手にフルハウスか2のクワッズを引かれて負けてしまうからです。
想定する相手の手役に応じて、アウツを調整しましょう。
アウツがわかれば勝率がわかる!
アウツを数えることができれば、それを引く確率も分かります。
フロップ時点であなたに見えていないカードは52枚から自分のカード2枚と、フロップの3枚を引いて47枚ですから、先ほどのフラッシュは9/47の確率で引けることがわかります。
アウツ別!勝率早見表
アウツ別に勝率をまとめました。
この表を見れば、あなたのドローの勝率が一目瞭然です。
- ターン、リバーはそれぞれターン、リバーのカードで逆転する確率
- 合算はターン、リバーのカードどちらかで逆転する確率。主にフロップでオールインになったときに使います
アウツ | よくあるシチュエーション | ターン | リバー | 合算 |
2枚 | フロップ以降にセットを引く | 4.26% | 4.35% | 8.42% |
3枚 | 1オーバー | 6.38% | 6.52% | 12.59% |
4枚 | GSSD ※1 | 8.51% | 8.7% | 16.47% |
6枚 | 2オーバー | 12.77% | 13.04% | 24.14% |
7枚 | 1オーバー+GSSD | 14.89% | 15.22% | 27.84% |
8枚 | OESD ※2 | 17.02% | 17.39% | 31.45% |
9枚 | FD ※3 | 19.15% | 19.57% | 34.97% |
12枚 | GSSD+FD | 25.53% | 26.09% | 44.96% |
15枚 | FD+OESD | 31.91% | 32.61% | 54.12% |
※1 GSSD ガットショットストレートドロー
※2 OESD オープンエンドストレートドロー
※3 FD フラッシュドロー
特に覚えたいのが、8アウツと9アウツの勝率です。よく出てくるドローなので覚えておいて損はないですよ!
2%4%の法則で勝率を見積もろう
2%4%の法則とは、アウツから勝率を簡単に見積もる方法です。
もし、正確な勝率を暗記していなくても、2%4%の法則を使えば、プレー中でもぱっと勝率を計算できますよ!
- アウツ×2%が次のカードで逆転する確率の近似値になる
- アウツ×4%が上の表の「合算」に相当する確率の近似値になる
- フロップ時点でもターン時点でも使える
例: あなたのハンドには、ターンでオープンエンドストレートドローが付きました。リバーのカードでドローを引ける確率はどれくらいでしょうか?
アウツは8枚ですから、
8×2%=16%
でドローを引けると見積もることができます。実際の確率は約17.4%ですから、大きくは外れていないことがわかります。
2%4%の法則は、4アウツくらいまでの確率はかなり正確に見積もれますが、アウツが増えるとズレが生じてしまいます。
実際の確率と2%4%の法則の計算結果を見比べて、どれくらいズレているのかを覚えておくとより正確に勝率を見積もれるでしょう。
ポーカーのオッズの例題!そのドローはコールすべき?
オッズに合うかどうかを確かめる例題を2つ用意しました。順番に見ていきましょう。
例題1: ターンのガットショット
HJのレイズにBBのあなたは♠8♠6でコールしており、現在ターンの場面です。
ターン(pot:$21)
♠A♥9♣5♥K
あなたはチェックすると、HJは$14のベットをしてきました。あなたはコールするべきでしょうか?
現状あなたがベストハンドである可能性はゼロに等しいです。相手のブラフにすら負けているでしょう。
フロップのバックドアも付かなかったので、現状あなたはガットショットがあるだけです。
よって、アウツは
♥7♦7♠7♣7
の4枚です。リバーでガットショットを引く確率は8.7%になります。
次にオッズを考えてみましょう。あなたは$14の投資で$49のポットを争うことになります。
オッズは$49÷$14 = 3.5倍です。
よって必要勝率は
(1/3.5)×100 ≃28.5%
となり、全くオッズに合いません。よってコールすべきでないということがわかります。
例題2: ショートスタックからのリレイズオールイン
あなたは$1/$2のキャッシュゲームに座っています。
40BBのショートスタックのBTNが$6にレイズ、BBのあなたはK♦Q♦で$24に3ベット、BTNはコールします。
フロップ(pot:$49)
♦J♦T♣6
BBのあなたが$16にベットすると、BTNが$56のレイズオールインを返してきました。あなたはコールするべきでしょうか?
相手によってはあなたがベストハンドである可能性もありますが、ここではセットや2ペアに負けているだろうと仮定して、オッズに合うか考えてみましょう。
まず、あなたのアウツですが、
2♦3♦4♦5♦6♦7♦8♦9♦9♥9♣9♠A♦A♥A♣A♠
の15枚です。オールインになったときこれらを引ける確率は54.12%になります。
次にオッズを考えます。現在のポットは$49+$16+$56=$121です。あなたはすでに$16をベットしているので、コールには$40必要です。
オッズは
$121 ÷ $40 ≃ 3倍
必要勝率は33%になり、必要勝率を大きく上回っていることがわかるので、オッズコールするべきだとわかります。
ちなみに、もし♦Tが♠Tでただのオープンエンドだった場合は、勝率が31.45%となり、ギリギリオッズに合いません。
しかし、オッズに合わないから降りろとも言えないのも事実です。
なぜなら、実際には相手にはブラフや、Jのペアなど想定以上に弱い手が含まれていることも多いからです。
2オーバーがあれば、勝率を簡単に満たしますからね……!
こればかりは相手に応じて変えていくしかありません。
ポーカーのオッズを応用してみよう
オッズ理論はポーカーの様々なシーンで応用できます。
オッズを使えるのはドローを引きに行く時だけではありません。いくつか例を見ていきましょう。
ブラフの必要成功率を見積もれる!
ブラフをするか考える際、オッズ理論に似たアプローチができます。
- ブラフベット額 ÷ (ブラフベット額+ポット)
一見違う式に見えますがこれはオッズ理論の応用といえます。
例:あなたが$100のポットに$50のブラフベットをするとします。必要な成功率はどれくらいでしょうか?
式に当てはめると
50÷(50+100) = 1/3
となるので必要成功率は33%となります。
このブラフは言い換えると、$50の投資で$150を取りに行く勝負だと言えます。
こう考えると、オッズと似ているなと思えるでしょう。
ブラフキャッチの必要成功率を見積もれる!
ポーカーのオッズからブラフキャッチの必要成功率を見積もることができます。
これは、ドローを引きに行く時と同じ式で考えることができます。
例:リバーで対戦相手が$100のポットに$100のベットをしてきました。あなたの手はマージナルで、ブラフキャッチするかどうか考えています。ブラフキャッチの必要成功率はどのくらいでしょうか?
$100の投資で$300のポットを争うので、オッズは
$300 ÷ $100 =3倍
になります。よって、必要成功率は33%となります。
実際の勝率を求めるのは難しい
この2つの例ではオッズが分かっても、オッズに合うかを正確に求めるのは難しいです。
オッズに合うかを見積もるには、相手がどんな手を持っていそうなのか、どんな手なら相手は降りてくれるか、相手のベットにどんなブラフが含まれているのか、などを想像するしかありません。
その想像力は、ポーカーの経験や学習を続けることによってどんどん磨かれていきますよ!
ポーカーのオッズとアウツを理解して数学的に正しいプレーをしよう
オッズとアウツはポーカーを数学的に理解するための第一歩です。
- ポーカーのオッズは、「ポットの総量÷投資額」で逆数をとれば必要勝率になる
- アウツは逆転に必要なカードのことで、勝率を求めるのに必要
- 勝率と必要勝率を見比べることでコールすべきかわかる
- オッズの考えは様々なシーンで応用できる
そのコールが正しいのか、ブラフしていいのか悩んだ時には一度オッズを求めてみてください。
きっと指標として役立ってくれますよ!